空き家の解体費用は、木造で30坪の家の場合でも90〜150万円かかるなど高額です。しかし、古い実家などを相続したものの、解体費用が払えずに困っている人は少なくありません。本記事では、解体費用が払えない場合の対処法について詳しく解説します。

解体費用が払えない場合のおすすめの対処法

解体費用が払えない場合は、基本的に金を用意するか、もしくは何かを諦めるかという解決になりますが、不動産に価値がある場合は別の方法を採ることが可能です。

その方法は、先に家を売ったあとで更地にする方法なのですが、一般的な方法も含めて詳しくみていきましょう!

自治体の解体補助金制度の利用

解体費用の負担を軽減する方法の一つが、自治体の補助金制度の活用です。

例えば、神奈川県厚木市の「老朽空き家解体工事補助金」では、解体工事費の2分の1、上限50万円を補助しています。埼玉県さいたま市の「建替え工事助成制度」では、解体を伴う建替え工事費用の23%相当額を助成しています。 東京都練馬区の「除去工事費用の助成」では、吹付けアスベストなどの除去工事費用の3分の2を補助しており、戸建て住宅の場合は上限160万円となっています。

自治体によって補助内容は異なりますが、積極的に活用したい制度です。

解体ローンの利用

解体費用を一括で支払うのが難しい場合は、解体ローンの利用も検討しましょう。

例えば、新生銀行の「解体費ローン」は、借入金額50万円〜500万円、返済期間1年〜15年というゆとりのある条件設定です。千葉銀行の「空き家対策支援ローン」は、10万円〜500万円を6ヶ月〜10年かけて返済できます。 JAバンク千葉の「リフォームローン」は、100万円〜1,000万円を1年〜10年で返済可能です。

金利は2〜5%程度が一般的で、金融機関によって異なります。返済負担を分散できるメリットがある一方、手数料や金利分のコストは上乗せされることを覚えておきましょう。

家付きのまま土地を売却する方法

更地にしてから売るのが一般的ですが、解体費用を捻出できない場合は、古家付きのまま土地を売却するという選択肢もあります。

その際は、「更地渡し」という方法が有効です。これは、建物付きの状態で売買契約を結び、引渡しまでの間に売主側で解体を行うという方法です。

買主から受け取った売買代金を解体費用に充てられるので、自己資金がなくても解体が可能になります。

ただし、解体費用相当分、売却価格は下がるので、売主側のメリットはそれほど大きくないかもしれません。

賃貸に出して家賃収入で解体資金を貯める

築年数が古くても、立地条件が良ければリフォーム次第で賃貸需要が見込める物件もあります。

そのような実家であれば、しばらくの間、賃貸に出して家賃収入を得ながら、解体費用を貯めていくという方法も考えられます。家賃収入で解体費用をカバーできるまで数年かかるかもしれませんが、建物を有効活用しつつ資金を貯められるメリットがあります。 ただし、賃貸経営には入居者の募集や管理といった手間がかかります。

いざというときのために、家主保険への加入もお忘れなく。

空き家バンクの利用

全国の自治体が運営する「空き家バンク」を利用するのも一案です。

空き家バンクとは、空き家の売却や賃貸を希望する所有者から物件情報を募集し、移住希望者などとマッチングさせる制度です。古民家に魅力を感じる移住者や、別荘として利用したい層に向けて、古家付きのまま物件を売却・賃貸できる可能性があります。

空き家バンクに登録されている物件は、比較的リーズナブルな価格設定のものが多いようです。所有する実家が立地的に魅力的であれば、解体せずに手放すという選択肢も十分考えられます。

移住者の需要動向なども市町村の空き家担当課に問い合わせてみると良いかもしれません。

家の解体にはどれくらい費用がかかる?

構造別の解体費用相場 木造家屋の解体費用は坪単価3〜5万円、鉄骨造は5〜7万円、鉄筋コンクリート造は6〜8万円が相場です。30坪の木造家屋の解体には90〜150万円、40坪なら120〜200万円が目安となります。

建物の規模による解体費用の違い

当然ながら、家の広さが広いほど解体費用は高くなります。坪数が倍になれば、解体費用もおおむね倍の金額が必要と考えてよいでしょう。

立地条件などによる解体費用の変動

狭あいな道路で重機の進入が難しい場合や、敷地内に不要な設備や障害物がある場合は、余計な費用が発生します。また、アスベストなどの有害物質の除去や、地中の埋設物の撤去などの付帯工事が必要な場合も、費用が割高になる傾向にあります。

解体せずに放置するリスク

特定空き家認定と固定資産税の優遇措置喪失 適切な管理が行われていない空き家は、自治体から「特定空き家」に認定されるリスクがあります。認定されると、住宅用地の固定資産税の優遇措置が受けられなくなり、税負担が最大6倍になる可能性があります。

倒壊リスクと不審者の侵入リスク

老朽化が進むと、いつ家が倒壊してもおかしくありません。倒壊した家の撤去費用は所有者負担となります。また、放置された空き家は不審者が侵入して犯罪の温床になるリスクもあり、近隣住民とのトラブルに発展することも珍しくありません。

維持管理コストの発生

空き家を放置していても、定期的な除草や点検、修繕などの維持管理費用がかかります。長期間放置すればするほど、かえって余計な出費を強いられることになりかねません。

解体費用を抑えるためのポイント

複数の解体業者から見積もりを取る 解体工事の見積書は業者によってバラつきがあるので、2〜3社から見積書を取るのが鉄則です。相見積もりを取ることで、相場観をつかむとともに、過剰に高い見積もりを提示する業者を除外することができます。

家財の処分は自分で行う

家財道具や不用品があると、解体業者が片付けてくれますが、その分余計に費用がかかります。少しでも安く抑えたいなら、自分である程度片付けをしておくことが肝心です。

解体関連の手続きは自分で行う

家屋の滅失登記や、水道・電気・ガスの手続きなどは自分で行えば、業者に頼むよりも費用を節約できます。多少の手間はかかりますが、コストを抑えたいなら自分で対応することをおすすめします。

繁忙期を避けて解体時期をずらす

解体業者の繁忙期は12〜3月ですが、この時期は見積もり単価も割高になる傾向にあります。少しでも安く抑えたいのであれば、繁忙期を外して4〜11月に解体工事を行うのがベターです。

注意点

安すぎる解体業者への警戒 相場の半額以下といった法外に安い見積もりを出してくる解体業者は要注意です。廃棄物の不法投棄や、必要な工程の省略など、違法行為をしている可能性が疑われます。あとでトラブルに巻き込まれないためにも、あまりにも安い業者は避けましょう。

相続した実家を解体した後、更地にした土地を売却する場合、譲渡所得税の特別控除が適用されます。被相続人の居住用財産を、相続開始後3年以内に売却すれば、最高3,000万円まで控除が受けられるのです。

まとめ

老朽化した実家の解体費用が払えずに困っている人でも、自治体の補助金制度やローンの利用、不動産の売却や賃貸など、さまざまな対処法があることがわかりました。

解体せずに放置するのは、特定空き家への認定や不審者の侵入など、余計なリスクを招くだけです。

もし、解体費用の工面に悩んでいるのなら、まずは複数の解体業者に相談して、具体的な費用の見積もりや、様々な対処法についてアドバイスをもらうのが賢明でしょう。