◆奢侈禁止令と総絞り
総絞り(鹿の子)は一反あたり絞りが15万粒から20万粒。多いものになると30万粒。こんなに手間がかかり高価なものが、正式の場所に着られないのは徳川五代将軍綱吉の頃、奢侈禁止令(度を過ぎた贅沢を禁止する御布令)が出て総鹿の子絞りが禁止となり、それが今日まで続いていて正式な礼装として認められないのだそうです。現在、絞りの絵羽付けした振袖は、正式礼装に、訪問着や付下げで絞りと染めで絵羽付けしたものは略礼装として着られます。
◆紬が礼装にならないのは?
紬は結城紬など、どんなに高価であっても普段着のイメージがあります。かつて、農民がくず繭を紡いで自家製の布を織って着ていたというイメージが、今も伝わっているからです。現在は、玉繭などのほか、生糸を作るのと同じ上質な繭が使われて織られています。
◆茶会の着付け
紬(泥大島などの高級品でも)は茶席に合いません。布地に張りがありすぎ、動作が綺麗についていきません。衣擦れ(絹擦れ)の音が雰囲気を壊すとのことです。現在では柔らかく織った紬地の訪問着や付下げ、色無地に縫い紋など席の関わりに合わせ人気があるとか。一般の方は更衣なども含め、しきたりを守った方が無難とのことです。