2011年9月4日、台風12号が猛威を振るう悪天候の中、第25回中部ブロック和裁指導者研修会が、愛知県支部主管により愛知県蒲郡市の形原温泉「鈴岡」にて行われました。四半世紀目を迎えた今回の研修会会場は「初心に還ろう」と第1回目が行われた会場で、愛知、三重、岐阜、長野の4支部より61名が受講しました。
午後1時に開会し、主管県を代表して西岡支部長が挨拶、その後、渡辺会長が挨拶されました。
始めに「日本のふとん文化」と題し、全国綿寝具工業組合連合会理事長などを務めている丹羽ふとん店四代目店主・丹羽正行氏の講演がありました。丹羽氏は、ふとん業界初となる技能グランプリで優勝し、藍綬褒章を始め数々の受章歴を持ち、ふとん業界では第一人者としてテレビや雑誌など数多く取り上げられています。丹羽氏は、プロジェクターを使い収集した浮世絵や写真を投影しながら講演が進められ、昔は、囲炉裏端で衣類を掛け板の間で寝ていたことで、以外にも日本のふとん文化は歴史が浅いことや、海外でも「FUTON」と呼ばれていることなどを説明。
実際に道具を使って綿花から綿を取り出し、弓形の道具を使っての綿打ち、糸紡ぎも実演されました。また、綿花や絹繭、握り鋏、昔の「かいまき・夜着」のコレクションなども見せて頂きました。また、海外のふとん事情や後継者の問題、ふとん業界のことにも触れられました。
その後、休憩をはさみ、引き続き丹羽氏の「綿の扱い方・座布団製作実演」の技術研修が行われました。座布団の表布の上に、幾重にも綿を交互に重ねて行き、角となる部分は丁寧にたたみ、表布をひっくり返し、返し口をくけ、最後にふさを付けて完成しました。一つ一つの動作が無駄がなく正確で、職人技を感じることができました。座布団の表・裏、前・後を説明し、最後には実演で製作した座布団を受講者にプレゼントしていただけました。
その後、三遊亭楽春様による「笑って元気・楽しい落語」と題した講演が行われました。舞台の上には台が置かれ、赤い毛氈の上には座布団が敷かれ寄席のような雰囲気の中、講演が進められました。「一笑一若、一怒一老」というように一つ笑えば一つ若返り、一つ怒れば一つ老いると、笑いは良薬であることが科学的にも解明されている事を説明。そして、落語は話し手の仕草や言葉により、聞き手がその場面を想像することで、脳の働きが活発になり、若返りには落語を聞くことが良いとも話されました。そもそも噺家はお坊さんの説法が起源とされていて、噺家の間で使われている言葉では、扇子を「風」、羽織を「ダルマ」、手拭いを「曼荼羅」、舞台を「高座」と言い、手拭いは財布になり、扇子は箸となります。落語の中でよく目にする仕草の解説では、蕎麦のすすり方、男女のお酒の飲み方や勧め方の違い、着物の触り方で男女や職業の区別をするなども受講者を引き込んでの説明となりました。また、故三遊亭円楽師匠のエピソードや、子供達に落語教室を行い、着物など小道具の名前を質問したら、羽織を背広と言ったり、扇子を団扇、手拭いをタオルと答え、とても苦労したことも話されました。最後の質疑応答では、「なぜ女性の落語家はいないのか」「流派によって和服の畳み方が違うと話されましたが、実際に見せて欲しい」「落語はなぜ着物なのか」などの受講者からの質問に、一つずつ身振り手振りを交え丁寧に説明していただききました。
午後六時三十分より懇親会が行われ、西岡支部長は、愛知県で取り組んでいる直し物の加工料表作成について触れ挨拶をし、福沢ブロック長の挨拶の後、秋月三重県支部長の乾杯で開宴しました。余興として、数々のコンクールで優勝を果たし、愛知県で活躍中の津軽三味線奏者・馬場淳史氏の演奏が行われ、参加者は身体に響く三味線の音色の迫力に箸を止めて聞き入りました。また、ビンゴゲームも行われ、最後に堀部岐阜県支部長の三本締めで閉宴となりました。
翌五日、旅館のバスにて希望者が「ガン封じ寺」を参拝しました。癌予防について住職の説法を聞き、その後、住職の後に続いて本堂奥の「千仏洞めぐり」を体験し、それぞれ帰路に就きました。