日本和裁士会が、一般社団法人として初めての全国和裁研修会を、日本和裁士会主催・中部ブロック長野県支部主管・長野県職業能力開発協会後援のもと、平成2012年9月25日長野市にある「メルパルク長野」にて開催されました。愛知県からは大型バスを借り参加し、全国から200人の和裁士がこの研修会に集まりました。今回の研修会メインテーマを『原点にかえろう』とし、もう一度原点にかえり、和裁技術を見つめ直し、和裁士の未来を切り拓くことにつなげたい、そして今回の研修会を一つの契機にしようと「技術の検証・袷長着の裾合わせ」「シルクにまつわる四方山話」「今、仏教を考える」そして和装教育国民推進会議報告として「改訂された『中学校技術家庭』」と題した意義ある研修会が行われました。
◆技術の検証 袷長着の裾合わせ(実演:中部ブロック会員)
袷長着の裾合わせを西岡愛知県支部長の解説で、中部ブロック会員の木下美幸さん(長野県支部)・伊藤愛子さん(三重県支部)・山田輝好さん・河合利政さん(愛知県支部)の4名が、日頃行っている縫製方法で、実物大の裾合わせを舞台上で行いました。実演者の後方には大型スクリーンがあり、実演者の手元が映し出され、西岡支部長が裾芯の種類や入れ方、躾の方法、褄先の縫い方の違いを解説。また、サラリーマンや地方公務員の年収と比べ、現状の仕立代が低価格であることも説明しました。最後に、朝倉副支部長が「もう一度原点にかえって、持っている技術や知識を発揮し、将来の和裁士のためにも、和服裁縫業という業種を絶やさないためにも私たちが道筋を作らなければなりいません」と、まとめました。その後、実演者が縫製した実物が、会場内に展示され、受講者らは褄型の違いなど見比べていました。
◆シルクにまつわる四方山話(農学博士 関 宏夫 氏)
駒ヶ根シルクミュージアム館長の関宏夫氏は、この世に人が出現した時から、生きるための基本的な条件から体を守る物として、毛皮・麻・木綿・絹へと発達したことを解説され、絹の野蚕(天蚕)と家蚕との違い、家蚕の一生、現在の絹糸生産高の多い国順などスライドを使って話されました。
◆今、仏教を考える(善光寺寺務総長 若麻績 敏隆 氏)
善光寺の寺務総長である若麻績敏隆氏は、善光寺創建にまつわる話の中で、天台宗の貫主(男性)と浄土宗の上人(女性)の、お二方がおられることや、お参りの仕方など説明され、また、東日本大震災にあった陸前高田の松の木で作った四体のお地蔵さんと総ヒノキのお社を多くの方の善意で製作し、一体は善光寺にお祀りし、三体は陸前高田にお祀りされたことなど映像を交え語られました。
◆和装教育国民推進会議報告「改訂された中学校技術家庭」(和装教育国民推進会議 副議長 牧野 俊一 氏)
和装教育国民推進会議副議長の牧野俊一氏より、昭和五十七年に義務教育から着物に関する教育が消え、その後、着物文化の廃退を憂い、和装教育国民推進会議を立ち上げ運動を展開し、以来十六年が過ぎ、ようやく今年度より中学校教育に取り入れられたことや、和装教育課題支援事業の内容などの説明が行われました。
研修会後、同ホテルにて午後6時30分より西岡愛知県支部長の司会で交流会が行われ、秋月三重県支部長の開会の辞、渡辺会長の挨拶の後、牧野顧問の乾杯で開宴しました。善光寺の「木遣り」の余興や水引の実演、くじ引きが行われ、他支部の方達との話も弾む中、中村長野県支部顧問の中締め、堀部岐阜県支部長の閉会の辞で閉宴となりました。
翌25日、愛知県からの参加者は貸し切りバスにて善光寺の参拝と散策、穂高神社を参拝し、その後、昼食を済ませ松本城を見学しました。久しぶりの組合員の皆さんとのバスツアーでしたが、研修会も有意義で信州を満喫できた2日間となりました。