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午後1時より研修会が行われ、主管県の福澤長野県支部長は「先輩の諸先生方の築き上げた伝統ある灯を消さないように、技術の向上や人材の確保、縫って着るきものの良さや楽しさをアピールして、後世に引き継いでいただきたい」と挨拶されました。
◆特別講演
 海外縫製の実態・紋・しみぬきの知識 紋章上絵氏 宮島 尚武 氏
OLYMPUS DIGITAL CAMERA氏は、11歳の時に両親が亡くなり、中学生の時に紋屋を営む叔父に預けられました。見よう見まねで中学生の時までには紋が描けるようになったそうです。そして、昭和46年に紋のスクリーン印刷を開発し、昭和51年に特許を取得。北海道から沖縄までの紋屋さん100軒位指導して回ったそうです。しかし、きもの離れやレンタルなどできものの量が減少し、紋の仕事も少なくなり、紋章組合も5、6年前より自然消滅してしまいました。
10年ほど前より、ベトナムの海外縫製業者と紋を通じて交友があり、その業者がきものの縫製だけではなく、紋も一緒に描き、縫い紋も手がけたいと話しがあり、氏はベトナムのホーチミン市に行って、スクリーン印刷の技術を指導しました。今年も行く機会があり、海外縫製の工場は未だかつて撮影されたことがなく社長を説得し、撮影した写真を研修会会場のスクリーンに映し出しながら解説されました。この海外縫製業者の規模は、第1工場が約300名、第2工場が約150名で合計四450名。作業風景の写真では、体育館のような広い場所で裁断し、身頃・袖・衿など分業で、1つのテーブルに5~6名が腰掛けて作業をしています。新入社員は毎月20名ほどで面接の後1ヶ月間は運針だけを練習します。この工場では、1日250枚縫製され、給料は7千~8千円位、食事は1食10円~20円だそうです。この業者は日本でも仕事をしていて、全体の40%が国内で縫製をしています。ベトナムでの他の海外縫製業者は、ホーチミン市に集中していて(ハノイ市にはない)、大小合わせて10社(規模は50名~450名)で、納期は早くて3週間くらいかかるそうです。
紋については、「最近の喪服などには黒く見せるために樹脂がかかっています。石持ちにも樹脂がかかっていて、そのままでは紋は入りません。私が開発したある薬品を使って樹脂を落とせば、綺麗に紋は入ります」と説明。染み抜きのワンポイントアドバイスとして、血液の染み抜きを中性洗剤・水・タオル・綿棒5~6本を使って落とす方法を解説され、こすってはいけない・綿棒を変えてたたく・体温で乾かす・一番シミになりやすいのは糊が強い布地・輪になるので付いたら早く落とす・煮物の汁やミルクなども血液と同じ要領で早く落とすことが肝要と説明されました。最後に質疑応答があり終了しました。

◆技術研修
 簡単に着られる着装・アイディア着装アラカルト 長野県支部会員
ブロック05長野県支部の研究発表では、始めに「簡単に着られる着物」の発表がありました。帯を前で結ぶ場合の補助具として使う「滑る前板」は、滑りのよい布に古い前板を取り付けます。着物の上にこの前板を巻き付け、その上から帯を前結びにし、お太鼓を作り仮紐を締めたところで帯を後ろに回します。帯の下につけた前板が滑るので着崩れせずに帯を後ろに回すことができるということです。
「簡単で着崩れしない着付け」では長襦袢の袖のみを作り、着物の裏にくけ付ける方法や、一反から単袖と無双袖を一組ずつ作り、それを替え袖として使う方法、二部式長襦袢の裾よけに、竪衿と竪衿の間に布を取り付け、裾がはだけても足が見えない裾よけの説明がありました。次に「アイデア着物と着装アラカルト」の発表では、切らずに作る「名古屋帯の作り帯」、車の運転などに便利でおしゃれな「モンペの作り方」、古くなった二枚の着物でパッチワークのように様々な部分で接ぎ合わせて作った着物など、デザインや便利さに工夫をされた着物の発表がありました。

研修会終了後、次期開催支部の岐阜県支部堀部支部長が、来年の研修会を郡上八幡で行うと挨拶、その後、別会場で大正琴の演奏会がありました。

午後6時30分より懇親会が行われ、愛知県支部より着装部内藤幸子先生、牧野守さん、田村恵太郎さんらによる黒留袖の着装が行われました。長野県支部からは袋帯の変わり結びや日本舞踊などが行われ、宴会に花を添えました。
翌日、天竜川の天竜峡温泉港から唐笠港まで、鳶が青空を優雅に飛び交う風景を眺めながらの50分間、中部ブロックの皆さんと共に天竜船下りを満喫し、それぞれの家路へと向かいました。