第23回中部ブロック和裁指導者研修会が9月6日、岐阜県郡上市大和町にある古今伝授の里「フィールドミュージアム」に受講者60名が集まり、青空の下、開催されました。この地は東西20キロメートルにわたる広いエリアで、名勝東氏館跡庭園・史跡篠脇城など数多くの歴史遺産、展示館や施設があり、山里の美しい自然環境に恵まれた会場でした。
屋外での蝉時雨の中、研修会は午後1時より堀部幸子岐阜県支部長の挨拶で始まりました。始めに受講者全員で、東氏が建立した明建神社へ行き、ミュージアム所長の金子徳彦氏がハンドマイクを片手に「古今伝授について」を説明されました。次に「東氏記念館」へと移動。東氏ゆかりの史料や現東家から寄贈された古文書類、古今伝授関連資料、江戸期までの歌人、天皇など著名な歌人の短冊が保存されています。当日はレプリカではなく本物の和歌が展示してあり、当時の様子がうかがえました。
次に池の横に建つ茅葺き屋根の研修会場「篠脇山荘」に移り、畳の上に座布団というスタイルでの研修となりました。始めに「郡上紬について」と題し、郡上紬染織家の宗廣陽助氏と陶芸家の植村貞澄氏の講師により行われました。父力三氏の思い出や満州での苦労、一人で糸の選択から織りまで行う郡上紬の話しなど、興味ある話しが盛りだくさんで、予定の時間があっという間に過ぎてしまいました。
最後の講演は、田中旭泉氏による筑前琵琶演奏で、演目は「壇の浦悲曲」と「那須与一」でした。琵琶の収集家であった祖父の影響で、幼少の頃から琵琶の演奏を始めたという旭泉氏は、凛とした雰囲気の女性で、その演奏はすばらしいものでした。琵琶を手にした旭泉氏は、背景の池や山と一体となり、時には力強く、時には繊細でもの悲しい音色と語りで会場全体を物語の世界へ引き込んでゆきました。琵琶演奏の魅力と、そのすばらしさを実感しました。
今回の研修会で、衣の日本文化に携わっている私たちが、もう一度日本の心を感じ、また、この地の歴史や文化を知る糸口になったのではないかと思います。